WEBページ企画提案室

 

目次

 たとえば、こんなページ(1997年11月3日) 

 其の壱:金属製ペットのページ(1997年11月3日) 

 其の弐:配偶者観察ページ(1997年11月11日)

 其の三:HPだよ人生は(QuickUSOYAからの転載)

 其の四:撥音促音拗音のページ(QuickUSOYAからの転載)

 

 

 

たとえば、こんなページ

 たとえば、どこかの検索エンジンにこんなページが登録されていたと仮定しよう。

yomoyomoのプライベートルーム──38歳、フグ調理師の個人ページ。フグの料理法/ツーリング/財政改革/競馬/美少年についての情報を満載 

 多趣味で大いに結構である。しかし私はこのページに行く気がしない。どこに力を入れているのか、わからないからである。内容が豊富なホームページの落とし穴と言えよう。

 
   盛りだくさんなページは、indexを複数作るのがよい。検索エンジンへの登録は、別々に行うべきであろう。フグの料理法の興味を持っている人が、財政改革にも興味を持っていると仮定するべきではない。

 試しに、上の紹介文を以下のように分割してみよう。

yomoyomoのお命頂戴──フグと美少年の料理法についての情報を満載

yomoyomoの風に吹かれて──美少年めぐりツーリングについての情報を満載

yomoyomoの時事放談'97──美少年による財政の抜本的改革についての情報を満載

yomoyomoの大穴狙い──競馬、美少年、美しい一歳牡馬についての情報を満載

 ほーら、すっきりした。

 
   いきなり前置きがウケ狙いになってしまったが、私がいいたいのは、個人がWEBサイトの内容をいたずらに広げるのは、いけないことではないが、危険だということだ。私がこのページの内容を「嘘」に絞っているのも、そのためである。

 だいたい、私にとっては、嘘の登録だけでも結構面倒臭い。嘘以外の登録をする時間もなければ、気力もない。このページがテキストエディタではなく、マイクロソフト・ワードを使って実にいいかげんなフォーマットで書かれていることが、それを何よりもよく示している。まじめなホームページの書き手なら、間違ってもワードなんて使うべきではない。

 一太郎も使うべきではないと思うが、この時期に一太郎を使っている人の勇気は、誉められるべきであろう。

 
   またまた話が横道にそれてしまったが、私もときどき、「やゆよ記念財団」以外に、こんなページを作ってみたいと思うことがある。実現不可能とわかっていながら、文章、ページのレイアウト、さらには「ページ見ました」という女子大生からのレターへのお答えまで考えてしまうことさえある。

 これは時間の無駄であり、精神衛生上もよろしくない。そこで、私が勝手にアイディアをこのページに書き連ねて、それを勝手に誰かに使ってもらうことにした。「あ、こんなページ、作ってみたい」と思う人がいたら、どうか勝手に使ってほしい。知的所有権とかアイディア料とか、ケチなことは言わない(無論、聞く用意はある)。

 ただし、特定の人にアイディアを提供するわけではないので、一つのアイディアについて複数の人が別々のページを作る可能性がある。その場合には、それぞれが他の人に負けないホームページを作って欲しい。

 

 

 

其の壱:金属製ペットのページ

 趣味をそのままホームページの内容にするという方法は、実に簡単で、すばらしい。おそらくほとんどのWEBマスター(こんな言葉、あるのかどうか知らないが、yahooからのメールに書いてあった)が直面するであろう「さて、いったい何を書こうか」という問題を、なんの苦労もなく解決できる。

 しかも、同じ趣味を持つ人がそのページを見てメールをくれれば、その瞬間に「サークル」が形成される。ホームページによる自己主張ではなく、同じ趣味・主張を持つ人とのふれあいを目的にする人にとっては、この点が重要である。たとえばワニガメを飼育している人なら、ワニガメ画像満載のページを開いたあと、「こんにちは、私はワニガメがとっても好きなフランス文学専攻の女子大生です」というメールが来るのを指折り数えて待っているにちがいない。いや、そうに決まっている。ワニガメ飼育の目的なんて、ほかに何がある。

 一方、これといった趣味がない人はどうすれば良いのだろうか。あるいは、私と同じように、ホームページが唯一の趣味という人はどうすれば良いのだろうか。

 私はそんな人たちに提案したい。「ヤカンをペットにしなさい」と。

 
   ワニガメは極端な例だが、ペットのページは誰にとっても楽しい。珍しい動物の場合には「へー、そんな動物がいるのか」と納得してしまうし、雑種なんかが一人称で「ボク、クロです」なんて書いているページに遭遇して、WEBマスターの知的水準を疑うという別の楽しみもある。

 マンションに住んでいるなどの理由でペットを買えない人は、ヤカンをペットにすれば良い。ペットのヤカンちゃんを砂浜や草原に連れていき、写真を撮り、ホームページに掲載すれば、どこに出しても恥ずかしくないペット紹介の出来上がりだ。

 私が考えた概要は以下の通り

  • ヤカンは、ラグビー部が魔法の水を入れるようなオーソドックスなものを複数個準備(家族構成にあわせ、大小の構成を考える)。ステンレス製のものも1個必要(隣家のヤカンで可)。 
  • 犬がおよそしそうなものをすべてヤカンにもさせる。電柱でおしっこ、フリスビーのジャンピングキャッチ、他の家で飼われているヤカンの匂いの確認、お風呂、品評会のポーズ、蓄音機から流れる音楽に耳を傾ける、などなど。 
  • 犬はこんなことしないと思うが、砂浜で注ぎ口だけを残して埋められているヤカンの写真も載せたい。 
  • 犬小屋やロープ、首輪など多数の小道具が必要なので、友達に犬の飼い主がいる人がベター。本当に愛着をもってヤカンを飼育している人がベスト。 
  • フリスビーのジャンピングキャッチができるヤカンが地球上に存在するとは思えないので、カメラ、スキャナはもちろん、レタッチ用のソフトが必要。デジカメはよくわからないが、普通のカメラとスキャナを組み合わせて使うほうが小細工が効くような気がする。
  • キャプション(説明文)はホンモノのペットのホームページを参考に考える。同じくヤカンを飼育している人からのメールをねつ造できそう。
  • 決して、ペット系ページの作者がそうだと言うわけではないが、ヤカンへの馬鹿馬鹿しいほどの愛がにじみ出るようなページにしたい。
 
  「日本初のヤカン飼育ホームページは、オレが開く」と決意した人は、充分な時間、気力、技術、ソフト、器材、学生の場合には単位の余裕があることを確認したうえで、早速作成に取りかかって欲しい。ただし慌てる必要はない。おそらく「日本で最後」だから。

「そんなページ、とっくに作ってるよ」という奇特な方がいらっしゃるのなら、恐れ入りますがメールください。ただちにリンクします。

 

 

 

 

其の弐:配偶者観察ページ

 最近まで行っていた「読者アンケート」のおかげで、いろんな人からメールをいただいた。そのなかに、「友人から紹介してもらった」「同僚と一緒に見ている」「恋人がこのページのファン」といったコメントが、少なからず含まれていた。面白いことに、「夫婦で拝見しています」というのは、一つもない。

 NIFTYのFCOMEDYに夫婦で参加している人は、自然と私のページも夫婦で見てくれているはずである。しかしそれ以外は、夫婦の読者というのは、ほとんどいない。ちなみに私の嫁さんも、「やゆよ記念財団」の存在を知らない。

 趣味でインターネットに参加している人にとって、これは、現実社会から隔絶した空間なのである。配偶者という極めて「世俗的」な存在に、「ほら、こんなページがあるよ」なんて教えた瞬間に、壁が崩れてしまう。それが、理由なのではないか。

 ところが、題材として扱うなら、配偶者は極めてホームページに適した存在だと、私は思う。まず、書き手がよく知っている。次に、そんなに簡単には逃げたり死んだりしない。最後に、多くの読者は、配偶者というのがどういうものなのか、共通の土台で理解している。

 
   ところが、夫が妻を、妻が夫を紹介するホームページを、私は知らない。知らないから、是非だれかに作ってもらいたい。陶酔に陥るか、ひたすら謙遜を繰り返すかどちらかの自己紹介ページより、はるかに面白いと思うのだが、どうだろう。

 たとえば、食卓の片隅に古雑誌が置かれていたとしよう。あなたは、あなたの妻(または夫、以下同じ)がそれを片づけるのを待っている。しかし妻は、古雑誌の存在などまったく気にしていないようすだ。

 ここで、

 私の妻、A子は、どうしようもないズボラで、食卓の上には2週間前から古雑誌が置きっぱなしです。

 なんてホームページに書くのは、芸がない。問題の解決にもならない。以下の表現のほうが、あなたの苦しみ、無力感、A子さんの無頓着さがいっそうリアルに伝わる。

 

食卓の上に置かれた古雑誌 11月1日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月2日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月3日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月4日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月5日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月6日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月7日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月8日(JPEG 24KB)

食卓の上に置かれた古雑誌 11月9日(JPEG 24KB)

(以下、繰り返し) 勘違いされると困るので言っておくが、上の例のリンクらしき箇所は、実はどこにもリンクしていない。あくまでも例である。もちろん、「食卓の上に置かれた古雑誌」という記述も、私の家の実際の状況とは違う。「古新聞」が正しい。

 
   技術的なことを言えば、画像ファイルを一つ用意して、すべてそこにリンクすれば、見かけ上、何日も古雑誌が食卓の上に放置されていることになる。しかしそれは、手抜きというものであろう。食卓の上の旬のおかずが四季とともに変わり、雑誌の表紙が微妙に色あせていき、背景に映ったベランダの花があやめ、ひまわり、コスモス、ぼたんと変化し、さらに向こうの山々が若緑、新緑、紅葉、雪景色と移ろいゆく様を表現してこそ、人並みはずれた妻のズボラさが読者の心に響く。したがって、画像はTrue Colorが望ましい。

 上司の悪口を投稿するページを読んだことがあるが、面白いとは思わなかった。投稿者はとにかく、上司への憎悪で頭がいっぱいだから、「馬鹿」「無能」「穀潰し」といった悪口が最初に来る。なぜそこまで憎いのかの説明が甘い。上司の無能さを証明する事実を列記すれば、実際に無能かどうかの判断は、読者がしてくれるはずなのだが。

 配偶者のページも同じである。ひたすらフラットな表現で、配偶者の日常を記す。ズボラなのかどうか、だらしがないのかどうか、性格が曲がっているのかどうかの判断は、読者に任せよう。

 さて、ここで「なぜ悪口なのか」という疑問を抱く人がいるかもしれないが、答えは簡単。第一に、妻や夫を誉めてばかりのページは、見ていても面白くないから。第二に、愛情でいっぱいのホームページを全世界に向けて発信している夫婦だって、離婚するときにはやっぱり離婚するからである。

 もう一つ、「なぜお前が食卓の上の古雑誌を片づけないのだ」という疑問をお持ちの方もいるだろうが、それは「なぜ分母にゼロを代入してはいけないのですか」と質問するのと同じで、愚問である。

 
   私は、配偶者をホームページの題材にすることが、夫婦関係に悪化につながるとは思っていない。どんな夫にも、妻にも、欠点はある。なかには、自分の胸だけに秘めておくのはもったいない、とんでもない欠点もあるはずだ。

 ところが、友人や兄弟、家族などにそれを明かすと、夫婦喧嘩に発展する可能性が大きい。たとえば妻の弟に、「こないだ冷や麦食べたらね、つゆがポン酢でさ。口に入れた瞬間、時間がとまっちゃったよ」などと明かそうものなら、翌日には妻に「ポン酢が嫌いなら嫌いって言えばいいじゃない」と叱られるはずだ(そういう問題じゃないだろうが!)。

 ホームページならどうだろう。個人のプロフィールが明らかにされないプロバイダで、ペンネームを使ってホームページを開けば、作者やその配偶者の名前、職業、住所などを調べるのはまず不可能である。だから、誰も傷つけずに、妻や夫の欠点を全世界に知ってもらうことができる。ご本人が偶然そのページを見たら、まさか自分のことだとは思わないから、「オイオイ、こんなバカなヤツがいるよ」と教えてくれるかもしれない。夫婦でインターネットを楽しむ方法を問われれば、私にはこれくらいしか思い浮かばない。

 プランはほかにもあるが、そろそろ古新聞を片づけなければならないので、また日を改めて。

 

 

 

其の参:HPだよ人生は

 おもしろいホームページを作るのに必要なものって、なんだろうか?

 まともに動くパソコン。これは必須条件である。当たり前のようだが、買ったときから満身創痍のパソコンは意外と多い。ホームページを作りたい一心でコ●マの通信販売でパソコンを買ったのに、ホームページのはるか前方で壁にぶち当たってしまった人も多いのではないか。

 では、パソコンがつつがなく動いて、WWWブラウザも立ち上がって、HTMLエディタの使い方も覚えれば、それで十分なのか。答えは、もちろんノーである。「書くべきこと」がなければ、HTMLファイルのBODY、つまりホームページの中身は、いつまでたっても「空白」か、「工事中」でしかない。

 創作ができる人はいい。無から有を作り出すことができるから。しかし、創作は誰にでもできるものではない。ホームページを作るために、じゃあ詩でも書いてみようかな、ほーらできた、なんて言える人は、パソコンを買う前からとっくに詩人になっていたはずだ。

 創作ができない人は、無から有を作れない。では、ホームページも作れないのか。ビックリ価格とはいえ、ボーナスをはたいて買ったコ●マスペシャルは物置送りなのか。幸い、そんなに悲観的になる必要はない。ユニークな顔立ちや人生経験をもっている人は、それを淡々と文章化するだけで魅力的なホームページになる。

 面白い顔立ちはスキャナで取り込む必要があるからまたの機会に譲るとして、いちばん簡単なのは、人生経験を題材にしたホームページである。たとえば、

「山田太郎 36歳の会社員のページ」

はちょっとクリックする気にならないが、

「山田太郎 ニシキヘビに飲み込まれた36歳の会社員のページ」

なら、是非読んでみたい。「ニシキヘビに飲み込まれた」という言葉には、WEBサーファーを引きつけてやまない響きがある。

 しかし、私も含めて、人に話すほどの経験はない、という人も多い。中くらいの成績で普通の大学に進み、中堅企業に入って、平凡な奥さんをもらい、まあまあの子供ができて、目新しいところが何もない離婚をして、三大成人病のうちどれかにかかり、「家庭の医学」の記述通りに回復したところで、ありきたりの事故に巻き込まれ、人並みの最期を迎え、手垢のついたような弔辞で送られて、標準タイプの墓に入る。ホームページの題材にこれほど適していない人生はない。

 だからこ私は、これからホームページを作ろうそとしてい大学生や、社会人一年生に呼びかけたい。「HTMLで記述して恥ずかしくない人生を歩みなさい」と。

 誰の人生にも、節目がある。大学合格、春の出会い、夏の日のキャンプファイアー、晩秋の初体験失敗、厳冬の初体験再失敗、そして春の無惨な別れ……。青春の日々は二度と戻らない。だから若者たちには、「この子がオレの<H2>(見出
しレベル2)なんだな」とか、「うーん、このコくらいなら、<H3>ってとこか」とか、人生のなかでどれだけの意味を持つできごとなのか、噛みしめながら生きてほしいのである(無論、そう言っている本人が、同じころ<H6>の烙印を押されている可能性は十分にある)。

 さらに言えば、「こうやって手をつないだのが<H3>なんだな」とか、「こうやってキスしたのが<H2>なんだな」とか、「フッ、<H1>なんていらないさ。独りぼっちでも、生きていけるさ」という風に考えれば、たとえ実りのない日々でも、それなりに張り合いがある。春の雨のなか彼女と、にっくきテニスサークルのキャプテンがあいあい傘で歩いているのを見た瞬間、「オレの心は<BODYTEXT="#7f7f7f" BGCOLOR="#7f7f7f">ってところかな」などと常に留意しながら生きるべきだと、学生のキミは思わないか?

 当然、社会人についても同じことが言える。最期が刻一刻と近づいている金融機関の社員にはお気の毒というほかないが、ホームページの作者の立場から言えば、倒産は10年に1回出てくるかこないかの格好の題材である。ホームページなんて、10年後にはすっかりブームが終わってしまうはずだから、事実上、空前絶後の題材なのである。

××銀行が市場での資金調達に苦労しているなどという噂がありますが、事実無根であア・as。%bl%$ 12# 3...

といった、まるでモデムのコードの引きちぎられる音が聞こえそうな、緊迫感あふれる終わり方だと、なおいい。今はそれどころではないと思うが、破産申請と株主代表訴訟への対応が一段落した時点で、どなたか書いてくれないだろうか。

 無難な、というか、ありふれたホームページの内容の一つに、海外旅行の記録がある。兼高かおるが現役だった時代ほどではないにせよ、海外は日本人の日常生活とかけはなれた場所だから、ホームページの題材に適していることは間違いない。しかし、海外旅行に出かけるだけで、優れたホームページができるという保証は、もちろんない。

 ここからはホームページへの作者ではなく、旅行会社への提案になる。「ホームページのネタ仕込み旅行」というツアーを企画してはどうだろうか。創作はたいへんだ、かといって、わざわざ海外までいってもおもしろいホームページができるかどうかわからない、という人たちのために、まず旅行会社がホームページを書いてあげるのである。旅行者がするのは、ストーリー通りに観光地を巡り、キャプション(説明文)に合わせてデジカメのシャッターを押すことだけだ。

  •  最後に、私が考えた「レディメード」ホームページ海外旅行のポイントを記しておくことにしよう。
  • スチュワーデスを相手にヤマダさんが「あの赤い線が赤道ですね」とギャグをとばして一同苦笑
  • 入国書類の"SEX"欄にヤマダさんが「週2回」と記して一同失笑
  • クアラルンプール郊外のサファリパークでヤマダさんがニシキヘビに呑み込まれて一同冷笑
  • 葬式では遺影の代わりにパソコンのディスプレイが置かれ、「山田太郎ニシキヘビに飲み込まれた36歳の会社員のページ」をみんなで鑑賞して、ご遺族も交えて一同爆笑

 そのページ(またはツアー)、オレが作ると決めた人は、すぐ準備に取りかかろう。そんなページ、とっくに作ってるよという奇特な方がいらっしゃるのなら、メールください。すぐリンクして、合掌させていただきます。

 

 
 

其の四:撥音促音拗音のページ

 いまでは内容が変わってしまったのだが、何ヶ月か前、若い女性が自らの裸体の画像を掲載しているホームページを見つけた。裸体の画像は一枚のみで、メインは彼女が毎日の出来事や考えたことを記す日記である。しかし、この日記の内容がまた、局部の名称がどんどん出てくる類のヤツで、はっきり言えば露出狂なのである。

 いや、露出「狂」という言葉は適切でない。露出という行為そのものは、インターネットではありふれている。微笑を浮かべながら牛乳製造能力を誇示する女性、にこやかにソファの上に横たわり股関節の自由度の大きさを誇示する女性、爆笑しながらボーリングの球を使って産道の伸縮度を誇示している女性などがいる(最後のは無論ウソである。そんな奴がいたら、仮に私がどんなに飢えていても、「爆笑したいのはこっちじゃ」とツッコミを入れるに違いない)。

 女性が自分のエッチな画像や文を載せるだけで、多くのアクセスを得ることができるのはよくわかるし、実際そういったHP製作者もいるのだが、実はもうひとつの重要な要素 ――音声―― があまり活用されていないのではないか。もしこれが効果的に使われるならば、世の男性の旺盛なる想像力を刺激することのできるサイトを作れるに違いない。

 というわけで私は提案したい。「女たちよ、卑猥な音を集めたホームページを作りなさい」と。

* * *

 まず必要なのは、マイク、サウンドカードを実装したパソコン、そしてプリンである。プリンの直径は大きければ大きいほどいい。カップの上についているアルミ箔製の蓋を取る。カップを120度回転させ、開口部を斜め下に向ける。付属のプラスチック製スプーンで、プリンとカップの間に僅かな隙間を開ける。それまで空気圧の作用でカップの内部に収まっていたプリンは、隙間を通じてカップの内部にも空気が流れ込んだために、少しずつ動き始め、 

「カチュ ポッ」

という音を立てて皿の上に落ちる。なんだ、単純な音じゃないかとバカにしてはいけない。この音をWAVファイルに記録し、8分の1程度に減速して再生すれば、

 「ガブガブガブ ジョボジョボ ジュジュジュ......ボッワッワッ」

という、成人マンガの擬音語としてもなかなか使われないような卑猥な音であることがわかる。

 Windows付属の音声録音、再生用のソフトといえば、"サウンドレコーダ"である。このアプリケーションは減速機能を備えているものの、周波数を一定に保つ機能はついていない。したがって速度を8分の1にすることにより、周波数もまた8分の1になってしまう。

【ガタイのでかいオカマの立てた卑猥な音】

という気がしないでもないが、所詮はオマケのアプリケーションなので、多少の不都合には目をつぶり、黙って聞き入ってほしい。

 ある程度慣れてきたら、是非、カップ開口部の直径が15センチ以上で、しかもゼラチン含有率が高い業務用プリンに挑戦したい。皿の上に開けるときに発生する音は、1/1再生でも、

 「ジュッバ ジュッジュッジュバ ジュルジュルジュルジュルジュル ジョババババババババババババ......ボッワッワッワッワッ」

と、カタカナにすることが憚れるほどの超弩級の迫力である(「ジュ」が9個も含まれていることに注目していただきたい)。この音をもし、8分の1の速度で再生すればいったいどんな音になるのかと、純粋に科学的な立場から疑問に思った人もいるだろうが、今回はあくまでも入門編であり、「ッ」が168個とご説明するだけにとどめておこう。

 食物系の音でほかに利用しやすいのは、洋食用ソースの缶詰、とくに粘性が適当なホワイトソースである。私の経験からいえば、輸入品で背丈の大きな4〜5人分の缶詰に入っているものを、冷蔵庫で充分に冷やしてから開けると、ジュビグゥバッ感がピークに達する。

* * *

 卑猥音発生源の王様、それは言うまでもなく、流し台の排水口である。ただし、すべての排水口が卑猥音発生源になりうるわけではない、重要なのは、流入量と流出量が高い次元で微妙なバランスを保っていること、流出する水が適度な洗剤の泡、野菜クズなどの不純物を含んでいること、そして、強大な吸い出し圧力を生じさせる排水システムの形状である。

 排水口からの卑猥音は、基本的には、

 「ジュゴォォォォォォズルズルズル」

 またはその派生系だと考えていただいて、差し支えない。極めて単純な音である。しかしこの音には、深い欲望が隠されている。水を吸い込んでも吸い込んでも決して飽くことのない地の底からの叫び、それが「ジュゴォォォォォォズルズルズル」なのだ。

 喫茶店でアイスコーヒーを頼んだことがある人なら、ストローで最後の一滴まで飲んだあと、さらに「ジュルジュル」したいという衝動を感じ、辛うじて思いとどまった経験が必ずやあるはずだが、そこで思いとどまらないのが、社会的なステータスもプライドもない排水口の良さだと言えよう。

 さて、静止状態から一定の加速度で直線運動する物体の移動距離(s)、加速度(a)、速度(v)の間には、以下のような関係がある。

      v^2=2as

      v=√(2as)

 つまり、排水口から流れ落ちる水の速度は、落下する距離の平方根に比例して増加する。排水口の位置が高ければ高いほど、音は大きくなる。実際、私の家は7階建てのマンションの5階にあるのだが、引っ越しする前に住んでいた山の中腹にあるマンションの7階では、現在よりも大きく、執拗な音が出た。さらに昔に遡れば、別のマンションの1階に住んでいたころは、ほとんど音がしなかった。代わりに、すでに流れたはずの汚水がしばしば逆流してきて困った。無論、そんなことに喜ぶような馬鹿げた変態趣味は、私にはない。

 さて、私のマンションから百数十メートル行ったところに、最近、30階建てのオフィスビルが2棟完成した。その斜向かいには、オフィスビルよりも一段と高い、てっぺんにヘリポートが備え付けられているビルがある。その隣の隣では、なんと、101階建ての超高層ビル建設に向けた基礎工事が始まっている。散歩の途中で工事現場のそばを通るたびに、食べ残した酢豚のとろみを持っていつの日か101階の台所に忍び込んでみたいと、私は夢見るのである。

* * *

 さて、最後になったが、本題のホームページの作り方について説明しておこう。といっても、凝ったホームページはいらない。まず、適度な大きさの顔写真一枚。できるだけ、清楚なものを選ぶこと。決して、欲望を感じさせるものであってはいけない。次に、用意した音声ファイルの数だけ、ボタンを並べる。読者は、いや聴衆はボタンをクリックしたあと、パソコンのスピーカーが奏でる

 「ジュゴォォォォォォズルズルズル」

 「ガブガブガブ ジョボジョボ ジュジュジュ......ボッワッワッ」

 「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ......」

 といった美しい響きに目を閉じて聞き入り、清楚なポートレイトを手がかりに、無限の想像力を働かせることになる。余計な説明は不要。「この音は排水口」「この音は業務用のプリン」「この音はボーリングの球」などと説明をするのは、野暮というものだ。


(ご協力いただいた義眼さんにお礼申し上げます。)

 

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