■プロ野球、新体制の構想固まる
2004/07/09
プロ野球のオーナー会議が6日に都内で開かれ、来シーズンから巨人のみの1球団制でペナントレースを戦うことが確定的となった。巨人との試合で観客を増やしたいとするパ・リーグの各球団と、巨人との試合が減るのは受け入れられないとする巨人以外のセ・リーグ球団が歩み寄ったかたち。これにより来シーズンの巨人は、今年を上回る「史上最強打線」となる公算が強まった。
両リーグ事務局から提出され、コミッショナー会議で了承された案によれば、来シーズンはすべての球団を「巨人」と呼び、チームの勝敗にはこだわらず、奪三振、防御率、ホームラン数など個人成績だけを競うようにする。従来の一軍、二軍だけでは他チームの選手を吸収しきれないことから、一〜十二軍として試合を行い、年間成績に応じて翌シーズンの順位を入れ替える。なお、来年の十二軍の選手寮は横浜または神戸に設けられる案が有力だ。
この改革がドラフト制度にも大きな影響を及ぼすのは必至。逆指名の有無やくじ運のよしあしに関わらず、巨人に入団することは確定的であるため、ドラフト会議直後の記者会見では、有望選手が軒並みガッツポーズを見せることになりそう。「元巨人」を名乗れるようになる解説者も、この決定を軒並み歓迎している。
テレビ局各社も統合に賛成している。かつては20%以上が確実だった巨人戦のナイターの視聴率も、最近では10%台に低迷。1球団制の導入で、東京ドームの巨人対巨人、甲子園球場の巨人対巨人、福岡ドームの巨人対巨人の3試合だけでも、合計視聴率20%以上は確実との見方で関係者は一致している。
阪神、西武、ダイエーなど人気球団のファンも、来年からは巨人ファンに組み入れられる。一方、アンチ阪神、アンチ西武、アンチダイエーなどが、すんなりとアンチ巨人への変身を受け入れるかどうかは不透明な情勢だ。
■ヒトクローン胚作り、条件付きで認める
2004/07/14
総合生命科学技術会議の生命倫理専門調査会は13日にまとめた最終報告書のなかで、ヒトのクローン胚作りを条件付きで認めた。これにより日本もヒトクローン胚を用いた基礎研究や治療に向けて一歩踏み出すことになる。
報告書はクローン人間の誕生につながる研究目的、営利目的のクローン胚作りを、生命倫理の観点から妥当性に疑問が残るとして今後も禁止するよう強く求める一方で、個人として楽しむ場合に限って解禁するべきと結論づけている。テレビ番組を録画して放送終了後に楽しむことは事実上解禁されているのに、人間の胚だけを特別視するのは、法の下の平等の原則からみて不適切というのがその理由だ。
同じ論理から、将来は研究目的のクローン人間作りが禁止される一方で、個人として楽しむための趣味のクローン人間は解禁される公算が大きい。盆栽やランの栽培などの趣味と同じ気軽さで、精魂込めて「自分」を作る時代が到来しそうだ。
現時点でクローン胚作りに関する技術が完全に確立したわけではないが、近い将来、一般大衆にも使用可能なキットが開発される可能性もある。爆発的なクローン人間の増殖につながり、普通の生殖を経て生まれる人間の権益が阻害されるとの懸念から、専門家の間では未然に遺伝子にコピーガード情報を盛り込んでおくべきだとの声も出ている。
■赤いダイヤは勇気の証
2004/07/17
東京都港区。幹線道路に面した自動車のショールームでは、日曜日だというのに冷やかしの客さえほとんど来ない。今日は早めにシャッターを下ろしても、だれにも文句を言われないな、と若手社員が心のなかでつぶやいた瞬間、この日初めての客がやってきた。
「赤がいいかな。いや、銀だな。うん、銀にしよう」
山口尚也さんは28歳の建設作業員。18歳で初めて中古で自動車を手に入れて以来、同じメーカーの車を乗り継いできた。昨今の欠陥やリコール隠しをめぐる騒ぎは、もちろん聞いている。が、いまさらほかのメーカーの車に乗る気はさらさらない。
山口さんが購入を即決したのはコルト。周りを取り囲んだセールスマンのなかには、もう永遠に売れないかもしれないという不安のなか、思いがけなく舞い込んだ注文に涙ぐんでいる人もいる。
数日後、山口さんが車を取りに来た。キーを受け取り車に乗り込む。ディーラーの裏側にある出口から、左右を確認して車道に出ようとした瞬間、大柄な白人男性が両手を広げて道をふさいだ。
怪訝な顔で窓をおろした山口さんに、外人は話しかけた。
"Do you wanna be a stunt man?"
この外人は、ハリウッドでスタントマンの事務所を経営するビル・マットソンさん。はるばる日本まで新人スタントマンをスカウトに来た理由について、彼はこう語った。
"I've been looking for a REAL samurai. He is the one."
* * *
富山県内にある別のディーラーでは、カタログを広げて商品の魅力を説明するはずのテーブルの上で、セールスマンが新聞を読み、眉間にしわを寄せている。
「国交省、三菱ふそう社長に厳重注意」
三菱ふそう、そしてその親会社である三菱自動車が、深刻な販売不振にあえいでいる。欠陥隠しを伝える大きな見出しが連日、紙面を飾る現状では、どんなに優秀なセールスマンもお手上げだ。25年間にわたり三菱車だけを売ってきた男性社員は「大学を卒業した娘に、うちの車を勧めたかったんだけど」と苦笑する。
しかし、そんな三菱車を買う人が、少数だが、いる。
1546台――今年6月のコルトの販売台数だ。昨年同期比を約6割下回り、社運をかけた主力車種としてはとても十分な数字とはいえない。それでも、足元から崩壊した三菱車の信頼性を考えれば、1546台も売れたのは驚異的といえるだろう。普通ならこの時期、三菱車は買わない。言い換えれば、普通でない人が、1546人のユーザーのなかにちらばっている……。
* * *
群馬県の峠道。週末の深夜になると、県内はもちろん、関東一円、遠くは関西方面からも多くの車が集結する。彼らが競うのは曲がりくねった道を、どれだけ速く駆け抜けることができるか。勝つために必要なのは優れた性能の車、高度なドライビングテクニック、そして――これが最も重要なのだが――死を恐れない度胸だ。
星空の下、低く力強い排気音が次第に大きくなる。森にさえぎられた暗闇から、ヘッドライトの光が伸びる。その直後に猛スピードで視界に現れたのは2台のスポーツカー。車体をガードレールぎりぎりのところまで寄せながら、コーナーを駆け抜けていく。そんなシーンが毎晩、何度も繰り返された。少しでもコントロールを誤れば、運が良くてガードレールに接触、運が悪ければ谷底が待っている。
かつて、この峠道では数々のヒーローが生まれた。極限までブレーキを踏まない男や、ガードレールに数センチ単位まで寄った男が伝説になった。彼らのうちあるものは結婚して子どもができたとたんに死が恐ろしくなり、そしてあるものは大けがをして峠を去っていった。谷底に転落して二度と生きては戻らなかったものも、一人や二人ではない。
この夏、峠の様子が変わった。コーナーを攻めるのは1台のコルトだけ。攻めるといっても、ドリフトするでもなく、急加速するでもなく、ひたすら制限速度を守り、ガードレールとの間に十分な間隔を保ったままコーナーを通過していく。
テールランプの赤い光をみつめる道端のギャラリーからは、羨望とも畏怖ともつかないため息がこぼれる。
「あ、あれが伝説のコルトか。まともじゃねえ……」
何の前触れもなく峠に現れたこの黄色い乗用車が、走り屋たちの尺度を一夜にして根底から覆した。いま尊敬を集めるのは、「速いやつ」ではなく、プロペラシャフトやタイヤが脱落するリスクを省みずに三菱車に乗る、命知らずのドライバーだけだ。
夏の虫の音にかき消されそうな押し殺した声で、こんな会話も交わされていた。
「中古車業者に持ち込んだら、安く買い叩かれるらしいぞ」
「し、信じられねえ。オレにはとても乗りこなせねえ」
* * *
田上紀夫さんは腕を組んで考えていた。
――やはり、こうするしかないのではないか。自分の勇気を証明するためには、ほかに方法はないのではないか。
田上さんは過去にも数年ごとに、自らの度胸を試すために命をかけてきた。周囲の誰もが、田上さんが失敗やけがはもちろん、命を落とすことさえも恐れない勇気の持ち主であることを認めている。しかし、田上さんはひとつの思いにさいなまれていた。
――これまで自分が続けてきた挑戦は、じつはまやかしに過ぎなかったのではないか。神様も、実はお喜びではないのではないか。
コルトを買うこと自体には、家族や友人は反対しなかった。ただ、それは車道を普通に走ればの話。田上さんがあるアイディアを明かすと、誰もが「いくらなんでもそれは無茶だ」と制止した。
――たしかに死ぬ可能性はある。途中で車になにが起きるかわからない。危険は承知の上だ。しかしこの挑戦で、私は本当の勇者として歴史に名を刻むことができる。諏訪大明神もきっと喜んでくださるに違いない。
長い自問自答の末、田上さんは明確な答えに至った。御柱ではなくコルトの運転席に座った田上さんは、エンジンをかけ、急斜面に向けて車をスタートさせた。
■転ばない靴ひも、秋にも実用化
2004/08/10
靴メーカーの月星化成が、転ばない靴ひもの開発に成功したと発表した。安全性実証のための試験も終了し、今年の秋にはこの靴ひもを装備した新商品が店頭に並ぶ見通しだ。
同社基礎技術開発センター主査の片平和裕氏は「靴のデザインが過去100年間にわたり進歩した結果、靴はひもを穴に通しておくだけで脱げなくなっている。いま、靴ひもをしばる理由は、放っておくと転んでしまうから」と語る。「逆に、転ばない靴ひもなら、結ぶ必要はないはず」
開発は3年前の秋、素材の選択から始まった。研究員が探したのは、片方の靴からだらしなく伸びてもう一方の靴底に踏まれても、引っ張られるとスルリと抜ける摩擦抵抗の極めて低い素材。数百種類の候補から、繊維の表面にテフロン加工をほどこしたひもに白羽の矢が立った。
昨年の夏以降、月星化成のテスト歩行者が、都内のアスファルト上、千葉県の九十九里浜、北海道の雪原、鳥取砂丘などで、過酷な条件のもと試験を繰り返したが、これまで転倒者はゼロ。靴ひもをほどいたまま山寺の長い石段を駆け下りる危険な実験にもパスし、安全性が実証された。
日本総合研究所の山本美智子上級研究員によれば、日本人は毎日、靴ひもをしばったりほどいたりするのに、のべ822万分もの時間を費やしており、転ばない靴ひもの開発でこの時間をレジャーや飲食にあてる人が増えると期待されている。
転ばない靴ひもの開発について、靴ひもをしばらない人でつくる市民団体「日本靴ひも解放戦線」の平岡悟朗代表は、「危険性がなくなった意味で、靴ひもをしばらずに歩く行為が社会の窓を開けたまま歩く行為に初めて肩を並べた。高く評価したい」とコメントしている。
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