■原発修理の問題明らかに
2002/06/27
経産省原子力安全・保安院の調べで、国内の原子力発電所で設備が故障したさい、規定通りの修理が行われていなかったことが明らかになった。保安院では、今後は規定を守るよう、電力各社を指導していく方針だ。
保安院の調べによれば、昨年5月に静岡県にある中部電力の浜岡原発で冷却水を送るポンプが故障したさいには、原発作業員がたまたま持っていたスリッパでポンプを叩いて修理していた。原子炉の緊急停止などは行われず、放射能漏れも発生しなかったという。
昨年11月には東京電力の福島第一原発で、配管に亀裂が入り、冷却水が漏れているのが発見されたが、検査員がすぐにスリッパで叩いて水漏れを止めた。この検査員は被曝して一時意識を失ったものの、同僚がスリッパで後頭部を叩くと、すぐに健康を回復したとされる。
今年1月には中国電力の島根原発で制御棒を動かすモーターが動かなくなり、原子炉をコントロールできない状況に陥った。作業員約20人がスリッパでモーターを叩き続けたところ、約5分後に正常に復旧。その後もモーターは断続的に故障しているものの、中国電力では、1日24時間スリッパでモーターを叩き続けているため、安全管理に死角はないと強調している。
保安院では、定められた通りに施設の点検や整備を行うよう電力各社を指導していく方針。一方、システム管理の専門家からは、石油化学プラントや宇宙開発などの分野で実績を積んだスリッパを、原発でも積極的に活用するべきとの声も上がっている。
原発廃止を求める市民の会の代表、山田スミ子さん:「歪んだ原子力行政をただすため、近く電力会社の役員室で鉄ゲタを振り回したい」
■北朝鮮亡命者、大使館内で死亡か?
2002/06/27
27日午後1時ごろ、北京のタンザニア大使館で、北朝鮮からの亡命者と思われる男女4人が、塀を乗り越えて内部に入り込んだ。4人は政治亡命を申請するつもりだったとみられるが、大使館の敷地内で飼われていたライオンの群れにかみつかれ、いずれも死亡した模様だ。
大使館の敷地内は、所在国の法律の効力が及ばない「治外法権」とされている。タンザニア大使館の場合には、セレンゲティ国立公園と同様の厳しい野生の掟が適用され、弱肉強食状態の社会が形成されていた。
北朝鮮との関係悪化を懸念する中国外務省は、4人の身柄を速やかに引き渡すよう動物たちに呼びかけたが、ライオンの次はハイエナ、ハイエナの次はハゲタカが肉をあさることになっており、引き渡しのメドは立っていない状態だ。
北京では、北朝鮮からの亡命者5人がインド大使館に逃げ込んだものの、ヒンドゥの戒律に従いカースト最下層に指定され、苦しい生活を余儀なくされたため、北朝鮮本国への逆亡命を企てる事件が発生したばかりだった。
■サイバー引きこもりの実態を調査
2002/06/30
文部科学省はサイバー引きこもりの実態について、本格的な調査を行う方針を固めた。サイバー引きこもりは日本国内で1000万人以上に達すると言われ、識者から早急な対策を求める声が上がっていた。
文科省によれば、サイバー引きこもりとは、▽ホームページをよく見るが、メールや電子掲示板を通じた他人との交流を嫌う人、▽自分のホームページを開いているが、メールアドレスを公開していない人、▽架空のホームページの内容を考えて、にやっと笑うだけの人、などを指す。実生活では幅広い交友関係を持ち、積極的に社会と関わっている人も、パソコンの使い方がわからないとすぐにサイバー引きこもり状態に陥るため、細心の注意が必要だ。
インターネットを通じた人間関係に詳しい金沢大学助教授、小村治さんによれば、昨年の12月から今年1月にかけて国内の山で遭難した18人のうち、12人はパソコンを持っていたにもかかわらず、メールの送信や掲示板への書き込みの経験はほとんどなかった。小村さんは、こたつの中でインターネットを楽しんでいれば、危険な冬山に出かけることもなかったはずだと指摘する。
一方、警察庁の調べによれば、昨年1年間でホームページなどに書かれた「死ね」「殺す」「放火してやる」などの過激な書き込みは1536万件に達したが、このうち実行されたのは0.0002%と、飲食店の10分の1の水準にとどまり、サイバー社会の安全性が実証された。ネットワーク利用者は大部分が意気地なしで、著作権の侵害や名誉毀損といった犯罪が精一杯との見方が強い。
文科省は、サイバー引きこもりがよく利用するホームページを調べ、積極的な掲示板への参加やメールの送信を呼びかける方針。プロバイダー各社にもメールアドレスなどの情報提出を呼びかけることにしている。しかし、対策が講じられるのは軽度のサイバー引きこもりだけで、パソコンデスクしか持っていない重症者の場合、有効な手だては今のところ見つかっていないのが実情だ。
■市場関係者、問われる存在価値
2002/07/03
東京・兜町の日本証券協会で2日、初めての市場関係者検定試験が行われた。受験したのは自称市場関係者452人。このうち合格者だけが、早ければ8月から胸にバッチをつけて公認の市場関係者としてマスコミからの問いに答えることができるようになる。
試験内容は、マーケットに伝えられた情報に対する反応が中心。たとえば東証1万円割れの状況では、「市場関係者の間に不安が広がっている」「今後の株高に期待する向きもある」「一本調子の下落は心配していないが、急上昇も期待していない」など、当たり障りのない反応が求められる。「9534円まで下げてから反騰する」といった明確な予想は、チーフストラテジストなどの派手な肩書きを持つ人ならともかく、単なる市場関係者が口にすれば「越権行為」とみなされる。
証券協会が急きょ資格の導入を決めたのは、マスコミを通じて株価を動かす力の一つとなっている「市場関係者」が、必ずしも市場と関係していなかったことが明らかになったためだ。ある全国紙がしばしば「市場関係者」としてコメントを紹介した丸川源さん(52歳)は、東京証券取引所の清掃を担当していた。仕事熱心で几帳面と仲間内で評判だった丸川さんは、毎晩のように新聞社の経済記者に電話をかけ、「おれは東証の隅から隅まで知り尽くしている男だ」と豪語していたという。
このほか、東証ビルで何度か漏電検査を行った関東電気保安協会の検査員も、市場関係者として某経済誌の取材に答えていた。この検査員は職権を乱用して、ほかに捜査当局関係者、暴力団関係者、病院関係者、遺族関係者、法曹界関係者を名乗り、多いときには1日20件ものコメントを新聞に載せていた。
「関係者」の明確な定義の動きは、霞ヶ関にも広がりつつある。外務省ではここ数年、「関係者の証言」が芋づる式の不正発覚を招いており、省内の敵対派閥を追い落とすための意図的な情報リークも横行している。川口外相は、このままでは外交の機能不全が国益に重大な悪影響を及ぼすと懸念。近く省内で筆記試験を実施し、局長クラス以上の重大犯罪を3件以上知っている職員にだけ、「関係者の証言」の資格を与える方針だ。
一方で、「関係者」という表現に潜む問題を指摘する声も根強い。「名前や所属する組織を明らかにせず発言することで、不当な利益を得ようとしているのではないか。あいまいな表現を使わず、誰がどういう立場で発言しているのかを明確に伝えることも、真実追求の一環であるはず。記者たちには猛省を求めたい」などと熱弁をふるう報道関係者が少なくない。
関係者という表現を逆手にとった企業もある。米系証券会社のゴールドマンサックスでは6月から、大口の個人投資家を対象にキーちゃん(シジュウカラ、♂、2歳)が株価動向についてアドバイスしている。証券取引はもちろん、日本語さえ理解しないが、長い目でみれば市場関係者の発言も、市場完全無関係者の鳴き声も、信ぴょう性に大きな違いはないという。
■脳の研究機関で爆発事故
2002/07/04
国立研究機関の理化学研究所(理研、埼玉県和光市)で3日、脳の研究中に爆発事故が発生、1人が死亡する事故があった。脳科学の実験で人的な被害が出たことはこれまでになく、関係者に衝撃を与えている。その一方で、脳の研究が新たな段階に入ったことを示す動きとの見方もある。
死亡したのは理研教授で、研究者グループのリーダーを務めていた小田原孝司さん(51)。小田原さんらのグループは、ヘルメット型の測定装置を用いて、外的な環境の変化に大脳がどう反応するかを調べていた。この日はボランティアの被験者が実験に協力することになっていたが、測定装置の調子が悪く、小田原さんがモニターを見ながら調整を行った。測定装置が正常に戻ったかどうか確かめるため、モニターをつけたまま小田原さんが実験を開始したところ、脳の働きが急激に活性化し、小田原さんの頭が内部から炸裂、粉々に飛び散った。測定装置も壊れたため、小田原さんが即死かどうかはわからないという。
埼玉県警では、マイクとスピーカーを近づけすぎると発生するハウリングに似た現象が、小田原さんの体内で発生したとみている。捜査官の一人は、モニターに映し出された小田原さんの大脳の活動状況が、視神経を経由して再び大脳に伝えられ、刺激を受けた大脳がさらに活発化、その様子がモニターに再び映し出され、無限の循環から抜け出せなくなった脳細胞が暴走したとの見方を示す。
事故現場の実験室ではこの日から、超感度の最新式センサーが導入された。モニターも大脳の状態を確かめやすい大画面タイプに変更されたばかりだった。また、この日の実験では「大都会」(クリスタルキング)の出だし部分を歌ったときの脳の状況を調べることになっていた。いくつもの条件が偶然重なったことが、結果的に爆発を招いたらしい。
脳の秘密の本格的な探究はまだ始まったばかりで、現在は基礎研究の段階。研究成果をもとに実用的な技術が確立されるのは早くても10年後との見方が強かった。今回の爆発事故で各研究機関が事故防止体制の見直しを迫られるのは必至だが、一方で抜本的な頭痛治療などの形で、意外と早く実用化が可能になりそうだとの期待も高まっている。
■使ってますか? 三つのキー
2002/07/06
今年の4月から5月にかけて、以下のようなチェーンメールが日本中のパソコン・ユーザーに届いた。
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今日、一通のメールが届きました。
メール内容は、ウィルスに感染してアドレス帳に入っているすべての人にそのウイルスを送っている可能性があるので、即除去してくださいと言うものでした。
このウィルスは、14日間潜んでその後、パソコンのキー入力を不能にしてしまうそうです。
下記の手順でウィルスのチェック及び除去をお願い致します。
手順
- キーボードの上をくまなく探し、上面に"Print Screen / SysRq"、"Scroll Lock"、"Pause Break"と書かれているキーがあるかどうかを確かめる。←この3種類のキーがウィルス
- もしキーが見つかれば、絶対に押さないこと。
- 大型のペンチやプライヤーで、キーを一つずつ引っこ抜く。この際、破片が飛び散ると感染することがあるので、注意すること。
- キートップを取ると、下に根が生えていることがあるので、これもきれいに除去。
- 開いた穴は、再びウイルスが入り込まないように、石膏を流し込んで平らにしておくこと。
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このような嘘のメールを、多くのパソコンユーザーが真に受けて、大量の知人や取引先に送信してしまったのは、単に、同じ時期に似たような「手口」のウイルスが猛威をふるっていたからだけではない。パソコン用ウイルスソフトのメーカー、マクフィー・セキュリティーによれば、メールを受け取った人の87%が、「つい先ほどまで、"Print Screen / SysRq"、"Scroll Lock"、"Pause Break"のキーなどなかったはずだ」と考え、パニック状態に陥ったという。
デスクトップで100個以上、ノートパソコンでも80個以上に達するキーのなかで、最も印象が薄いとされるのが上記の3つのキーだ。操作を間違ったユーザーがあわてて"Pause"を押しても、ビデオデッキと異なり、パソコンは止まってくれない。"Scroll Lock"を活用したくても、最近のパソコンは、スクロールし続けることがない。矢印キーや"Page UP"、"Page Dn"キーを離したとたんに画面は止まるから、ロックする必要がないのだ。"Print Sc"キーには、画面表示をそのままクリップボードに取り込む機能があると言われるが、その機能をどこで使えばいいのかという一般ユーザーの疑問には、誰も答えてくれない。
3つのキーにまつわる疑問を主要なパソコン・メーカーにぶつけてみたが、各社とも答えは「キーボードは海外生産が当たり前。うちも中国企業から仕入れているので、詳しい事情はわからない」といった内容だった。その中国企業に問い合わせると、「日本製品と同じ仕様にした」。やはり、三つのキーがキーボードについている理由は、誰も知らない。現在の大部分のパソコンの「祖先」となった機種を開発した米IBMも、「そんな些細な疑問よりもQWERTY配列の理由を解き明かすほうが先決」という見解を示している。
「三つのキーは、パソコンの先達からの贈り物なのではないか」と語るのは、会社員の大林希美子さん。大林さんはキー配列を自由に変更するフリーソフトを用いて、"Pause"を押すと「2004年に向けた事業計画書(案).htm」が画面にすぐ表示されるようにした。背後に上司の気配を感じたら、"Pause"を押して、仕事中によく見るお笑いWebサイトを隠す。パソコンはほかの社員や上司と共有しているが、"Pause"は押されることがないため、大林さんが施した仕掛けはまだ誰にも気がつかれていない。
コンピューター・セキュリティの専門家たち異口同音に指摘するのは、これらの「役立たず」キーの機能がそのままほかのキーに移植されてしまう可能性だ。ディスクやメモリ、ネットワークの機能を悪用して繁殖するコンピュータ・ウィルスに対する研究は盛んだが、キーボードを蝕むウィルスについては、ほとんど対策が講じられていないのが現状。感染に気づいたときには、"A"も"ESC"も"Ctrl + Alt + Delete"も、"Scroll Lock"と化していた……。そんな事態が発生すれば、冒頭で紹介した嘘メールの状況よりもはるかに深刻だ。
■CO2排出権確保の動きが本格化
2002/07/09
草原と砂漠の国、カザフスタン。西側の国境でカスピ海、東側の国境で中国と接するこの地域に、近く日本から電力・エネルギーの技術者が送り込まれることになった。彼らがめざすのは、カザフスタンにおける二酸化炭素(CO2)排出量の削減。その成否は、日本のCO2削減の成果を左右することになる。
世界的な規模でのCO2削減をうたった京都議定書には、先進国が途上国のCO2削減を助けた場合、これを先進国の削減量として計算できるとの条項がある。カザフスタンでの発電所改良は、日本国内の発電所改良と同じ意味を持つのだ。
「自国での削減には限界がある。今後、先進国が競って途上国のCO2削減を支援するようになるだろう。途上国で成果を上げられなければ、先進国の経済成長が停滞し、生活水準が低下する時代がすぐそこまで来ている」(経済産業省高官)
危機感を抱くのは政府や電力業界だけではない。日本自動車工業連絡協議会は今秋から、ブラジルで自転車やバスの利用を呼びかけるキャンペーンを始める。日本のCO2排出量は増加する一方で、電気自動車も普及には多くの困難が伴う。このままでは将来、乗用車の販売台数に規制が加えられるおそれがある。「それなら、日本車のシェアが比較的低いブラジルでマイカー利用を抑制し、CO2排出量枠を確保しておいたほうがいい」と、同協会の鎌田健介常務理事は説明する。
「『自動車通勤は健康の敵』『交通事故が家庭の幸せを一瞬にして奪う』『路上駐車はボディを釘で引っ掻いてくれというようなもの』――乗用車の真の姿を伝えれば、ブラジルのマイカー族の理解をきっと得られるはずだ」と鎌田氏は自信を見せる。
一方、えび、食用油、小麦粉のメーカーなどでつくる日本天ぷら振興会議では、中国各地の市場でこの4月から刺身や冷や奴、サラダの無料配布を行っている。中華料理といえば強火。中国全土の台所で発生するCO2は、地球全体の15%を占めるとも言われる。加熱する必要のない刺身、冷や奴、サラダが中国の食卓に登場するようになれば、CO2排出量を1%削減できる。これは、日本で天ぷら鍋の火の消し忘れのために発生するCO2排出量とほぼ等しい。
同会議の伊井和夫チェアマンは、「CO2は我々がなんとかするから、日本のお母さんには、火事のことなど忘れておいしい天ぷらをどんどん作ってもらいたい」と語る。
インドネシアの小中学校では来年9月から、体育の指導要領が改訂される。現在、クロールは左右の手で合計2回、または4回水をかくたびに一度息継ぎをしていいとされているが、新しい泳ぎ方は「16回、可能なら32回に一度息継ぎする」。教育長官の「子供の肺活量を増やすが目的」との説明を額面通りに受け止める人はいない。現地のメディアは、日本のプール業界団体が水面下でインドネシア政界に働きかけたとの見方を強めている。
アフリカ南部の国、ボツワナにも、日本の政府や業界団体が、さまざまな形でCO2の排出権を提供するよう働きかけている。同国のベマ・レピンゲレ副大統領は先月訪日したさい、記者会見で「日本からの援助はありがたいが、日本人の生活水準を維持するために我が国が犠牲になるのは納得できない」と、ため息をついた。消息筋によれば、副大統領はその直後に日本の外務省から「ODAはいくらでもやるから、今後はため息も我慢しろ」とクギをさされたという。
■MRSA、耐性の秘密が徐々に明らかに
2002/07/09
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)――深刻な院内感染の原因となっているこの菌は、なぜ抗菌薬に対する耐性を得たのか。遺伝子の突然変異というのがこれまでの定説だったが、MRSAの行動パターンも理由の一つなのではないかとの説が、ここにきて注目を集めている。
米疾病対策センター(CDC)が昨年末に発表した論文によれば、MRSAには、昼には活動が盛んになり、夜になると逆に沈静化する特徴がある。時間とともに変化する体内のイオン濃度を何らかのメカニズムで測定しているらしい。活発になりはじめるのは朝5時ごろ。逆に「寝静まる」のは夜8時ごろのことが多く、人間のライフサイクルとの間にはずれがある。CDCの研究者たちは、MRSAがいわば「早寝早起き」で増殖に必要なエネルギーを蓄えているのではないかと予測する。
大阪大学医学部の飯村昌子助教授は、電子顕微鏡でMRSAが神経繊維に群がる様子を撮影した。とはいっても神経繊維はその後も正常に働き続け、MRSAの細胞膜が一部へこむ程度。飯村助教授は、ミクロの世界で「からだけ踏み効果」が発生しているとみる。「人間の世界でもからだけ踏みの健康効果は科学的に証明されていないが、何でも試してみるという前向きな気持ちがMRSAの抵抗力を強めている可能性がある」
英王立衛生研究所のサム・シルバーマン教授も、MRSAの心理状態に注目している。シルバーマン教授が昨年末に明らかにした「MRSAの抵抗力の強さの秘密は、くよくよしない性格にある」との仮説は学界の失笑を買ったが、その後世界中で行われた実験では、大方の予想を裏切り、「くよくよするMRSA」の存在はまったく確認されなかった。
東京医科歯科大学の柏崎洸教授らの研究グループは、抗菌薬を投与された患者の体内ではじっとしていたMRSAが、投与を中断したとたんに3センチほど移動、投与が再開されるとまたもとの部位に戻ることを確かめた。理由は不明だが、抗菌薬との激しい戦いで疲れきった心を癒すため、MRSAがぶらりと旅に出た可能性が強い。このほか柏崎教授らの研究で、MRSAを注射したマウスの耳元で「ラジオ体操第一、よーい」とささやき、続けてピアノ前奏を流すと、内耳にMRSAが集まって規則正しく並ぶことも明らかになった。
一連の研究成果から、苦労らしい苦労をせずに耐性を備えたと軽蔑されがちだったMRSAの、知られざる横顔に光が当たるようになった。柏崎教授は「MRSAが努力しているのだから、患者も見習って努力しなければ。大切なのは抗菌薬に頼らず、患者が本来具えているはずの抵抗力を強めること。週末には健康のため、50キロくらい散歩したほうがいい」と指摘する。
■練馬の空き地、世界文化遺産に?
2002/07/12
練馬区役所は11日、ユネスコの世界文化遺産委員会に、練馬区桜台2丁目にある空き地、325平方メートルを世界文化遺産に登録するよう申請した。空き地を文化財として保存する試みは内外に前例がなく、関係者の注目を集めている。
この空き地は昭和40年代、練馬区の宅地化が進んだあとも放置されており、かつては近所に住む男の子の遊び場として人気があった。平成に入ってからは少子化の影響でほとんど使われなくなり、雑草が大人の腰の高さまで生い茂っていた。平成5年には区が空き地を「区道幅員拡張用地」に指定。周囲をフェンスで囲ったために立ち入ることができなくなった。
しかし、平成12年になって区が財政悪化を理由に公共工事計画を全面的に見直し、用地指定は解除された。かつてこの空き地で遊んだ思い出のある住民らが、空き地を子供の遊び場として復活させる運動を始めたのは昨年秋のことだ。
その後、ボランティアの手で除草やフェンス、看板を取り除く作業が進められた。土管3本は練馬ヒューム管工業(株)が元社員の力を借りて手作りし、無償で提供。3月に除幕式が行われた。それ以来、日本のマンガ・アニメに詳しい外国人が、この空き地を訪れることが増えているという。フランス・リヨン市からやって来たベルナール・バレリーさんは「日本中を探して、ようやく土管付きの空き地に巡り逢えた」と感慨深げだった。
付近の住民らは、子供たちを集めて野球教室を近く開く予定だが、塾通いやテレビゲームで忙しい子供が多く、まだ募集枠の5人は埋まっていないという。世界文化遺産指定を受けるためには、空き地の隣家で盆栽を世話してくれる和服姿、ハゲ、めがねの怒りやすい熟年男性を探し当てることが必須条件だ。
■長野県議会、統一候補を擁立へ
2002/07/14
ダム建設の凍結を宣言した田中康夫知事の不信任決議を採択した長野県議会が、出直し選挙に向けて統一候補の擁立に向けた準備を進めている。ダム建設の推進を主張し、自然環境にも詳しいとの理由で、アメリカ・ノースダコタ州の森林で捕獲されたビーバーが出馬する公算が強い。
ビーバーは、外敵の巣への侵入を防ぐためダムを作ることで知られている。ダムはときには高さ3メートル、幅100メートル以上の大きさになることもある。生息地の森林地帯ですべてのダムの建設が禁止されれば、ビーバーの絶滅は必至で、土木族の県議とは利害が一致している。脱ダム派の市民団体はこれまで自然保全を主張しており、つぶらな瞳のビーバーを強くは批判しにくいはず、との思惑もある。
県議会では、巨大な蟻塚を作るオーストラリアのシロアリ、複雑なトンネル網を地下に張りめぐらすアメリカのプレーリードッグ、長期間かけて珊瑚礁を形成する南太平洋のサンゴ虫など、土木系野生動物と統一戦線を組み、長野入りしてビーバーを応援するよう働きかける方針だ。
県内の土木業界も、ビーバー擁立ですでに結束している。ただ業界の一部には、工事予定価格100万円につき尻尾を1回叩くという芸を、任期中にビーバーが覚えてくれるとは限らないとの慎重論もある。
■超音速航空機、実験失敗でノウハウ蓄積
2002/07/15
「マスダアキオさん/男性/32歳。キノジュンコさん/女性/34歳。オオトモケンさん/男性/56歳。ジョニーウェストさん/男性/28歳……」
航空宇宙技術研究所がマスコミ各社に配布したリストに、超音速航空機の模型に積んであったダミー人形の名前が記されている。14日午前、オーストラリアの実験場で行われた模型の打ち上げは失敗。模型を背負って高度18キロまで上昇するはずだったロケットは大爆発した。これが本物の超音速航空機なら、多くの人命が失われただろう。
実験場のそばに設けられた大型テントの下では、係員らがダミー人形の破片を集めていた。
「これはマスダさんの足、これはキノさんの右手かな。これはウェストさん? いやオオトモさんかな」
ばらばらに飛び散った破片を集めてダミー人形を復元するのは至難の業だ。しかし、いつかこの経験が、本当の超音速事故に役立つ日がやってくる。
「超音速旅行を夢見る人の家族の会」は同じ日、都内で初めての会合を開き、航空会社や超音速航空機のメーカーを相手に損害賠償を求める裁判を起こす訓練の実施を決めた。参加者の一人、甲斐多美さんは「今朝もいってらっしゃいと玄関先でやさしく送ってくれた夫が、いつか帰らぬ人になるとはとても信じられない」と涙を流す。保険業界も専用窓口を設けて遺族からの相談に乗る訓練を積むなど、ノウハウの蓄積に余念がない。
航空評論家の並木俊介さんは、事故の可能性を直視した一連の取り組みを高く評価する。
「蒸気機関車、大型客船、飛行船、航空機……。あらゆる交通機関には、大惨事を引き起こし、多くの人命を奪った実績がある。『絶対安全』などと嘘をつかず、事故に備えた訓練をつむアプローチのほうが現実的だ」
15日、事故現場からはボイスレコーダが回収された。
「発射3秒前、振動がだんだん激しくなってきた。2秒前、警報ランプ作動。1秒前、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ(ブチッ)」
模型に搭載されていたダミー操縦士の残した声の分析が、今後の原因究明作業訓練のかぎを握るとみられている。
当初の計画では、打ち上げ実験は今年秋以降にも3回行われることになっていた。今回の実験失敗で、計画が予定よりも大幅に遅れるとの見方もあるが、関係者は「失敗に備えたデータ収集は予想よりも早く終わりそうだ」と自信を深めている。
■通貨当局、急激な円高を懸念
2002/07/16
外為市場で急激な円高が続いている。政府は、ようやく回復軌道に乗り始めた景気の腰折れを強く懸念しているが、世界的なドル安の流れのなかで、いまのところ有効な対策を打ち出せていないのが現状だ。
塩川正十郎財務相は14日朝のテレビ番組に出演したさい、「1ドル125〜135円が望ましい」と語り、115円に迫った現在の円相場が、日本製品の価格競争力に好ましくない影響を及ぼしていることを認めた。
円高の理由のなかで最も注目を集めているのが、米エンロン、ワールドコムなど有名企業を舞台にした不正疑惑。投資家の信頼を失った米国の証券市場から資金が逃げ出し、ドルが売られる構図になっている。だが、市場ではどの国の企業も内情は似たり寄ったりとの見方が強い。塩川財務相も14日夜、日本記者クラブでの会見で、「後援会をやってくれている山田さんのところでも、奥さんが東淀川金属工業の社用車で買い物に出かけているはず」と語り、米国の投資家に現実を直視するよう呼びかけた。
財務省と日本銀行は、円相場の急激な上昇を防ぐため、東京地検特捜部や国税庁とともに、粉飾決算の疑いがある大型企業への協調強制捜査を検討している模様だ。財務省高官は「1〜2社を倒産に追い込めば、市場全体に不安が広がり、外資の安易な日本株買いと一層の円高を抑えることができる」との見方を示す。
15日には塩川財務相がNHKの朝のニュースに生出演。「財政再建のメドはまったく立っておらず、日本の財政はお先真っ暗」などと絶望的な見方を示した。これも、外資が日本の債券市場に流入することを見越して財務相が張った予防線のようだ。政府首脳によれば、円相場の1ドル110円突破に備えて「いまどき円建て資産を購入するやつは、責任判断能力なしとみたほうがいい」との財務相の談話もすでに準備されているという。
円高を防ぐうえで手強い存在が、米ブッシュ大統領だ。ブッシュ政権の市場改革に向けた意欲を市場が疑問視している限り、ドル売り、米国株売りの流れを変えるのは難しい。小泉首相が最近、記者団に「ときには毒を以て毒を制すことも必要」と語ったのは、ブッシュ大統領に日本の財務相兼任を要請して、一気に円暴落の局面に持ち込むというウルトラCを念頭に置いたうえでの発言との観測もある。
さらに円高が進み、1ドル95円を突破すれば、固定相場制復活の主張が俄然、現実味を帯びることになる。産業界では今後、森喜朗氏のカムバックという最終兵器以外には打つ手がなくなる1ドル50円突破までに、本格的な対策を講じるよう通貨当局に求める声が一段と強まりそうだ。
■電機メーカー、個人認証装置を開発
2002/07/18
大手電機メーカー各社が、匂いによる個人認証装置の開発に取り組んでいる。指紋や音声、虹彩を手がかりに特定の個人かどうかを判定する機器はすでに実用化されているが、匂いの活用は始まったばかり。次世代の防犯システムに欠かせない技術になると予測する関係者も多い。
東芝が今年4月に東京で行われた日本防犯機器ショーに出展した装置は、脇の下の匂いを分析する。匂いのもとになる汗の化学成分が人によりさまざまで、双子の兄弟でも微妙に異なることに注目した。センサーに脇の下を近づければ、数分後にランプが水色から黄土色に変化し、認証が完了したことを示す。適度な匂いが保たれた正常な脇の下なら99.9%の精度で識別できるという。予定小売価格が1台30万円程度と他の方式に比べて手頃なのは、姉妹品のドリアン品種識別装置がすでに実用化され、タイやマレーシアに大量に輸出されているためだ。
日立は冷蔵庫の匂いを手がかりに個人を認証するシステムを開発中。味噌汁や雑煮の味が家庭により異なるのはよく知られているが、最近の調査で、買い物や生活、掃除の習慣の違いが色濃く映し出される冷蔵庫内の匂いにも、指紋並みの多様性があることがわかった。しかし、冷蔵庫を勤務先に持っていくことはできないため、まず利用者の家庭を訪問して大量の匂いデータを収集。認証時には多くの種類の匂いを再現し、そのなかから「正解」を一つ選ぶ方式を採用した。このシステムを使えば、個人認証を99.99%の精度で、2〜3分以内に行うことができるという。開発チームは、同僚が自分以上に過酷な環境で暮らしていることを知り、結束が一段と強まったと、思わぬ効果を強調する。
三菱電機が利用しているのは「オド・アンプリファイアー」。人間の体臭を、特殊な装置を用いて大幅に増幅し、確実に個人認証を行うというアイディアだ。利用者はオド・アンプリファイアーを頭からかぶり、一定時間、奇声を出しながら棒振り運動を行う。このときに出る汗の匂いはそれほど濃くないが、オド・アンプリファイアーを着用したまま毎日の夕方や夏休みの合宿期間中、運動を継続することにより、匂いは100倍以上に濃縮され、99.999%精度の個人認証が可能になる。オド・アンプリファイアーの開発に全面的に協力した日本剣道連盟は、競技人口の増加に期待を寄せている。
松下電器産業は、犬の社会構造にヒントを得た。犬は散歩の最中、頻繁に匂いをかいで、その地域が別の犬のなわばりなのかどうか、その犬はどれくらいの大きさでどのような生理状況にあるのかを瞬時に判断するといわれている。犬の嗅覚は人間の数千倍に達することから、同じしくみの活用は不可能とみられていたが、匂いセンサーの進歩の結果、99.9999%の精度で3秒以内に個人を識別する技術的なメドが立った。今年の秋には研究施設内の廊下に数十個の電柱型、消火栓型認証装置が設置され、実用化に向けた最終テストが始まることになっている。
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